知識欲を満たす跳び箱

ゴミ箱である.覚書,備忘録とも言う.

宇宙に命はあるのか読了

ロケットの父は宇宙に出ることのできるロケットを作ったわけでもないのになぜロケットの父と呼ばれるのか

彼は宇宙に行くことのできる道具がロケットであると気づいたと同時に,液体燃料ロケットを使うことによって秒速7.9kmの壁を超えることができると考え,それを広めることに成功したからである.

コロンブスの卵とも呼ぶべきブレイクスルーは非常に面白い.ない価値,ない概念を作ったことが評価されている.

フォンブラウンコロリョフ.二人のファウスト博士.軍で爆弾を落とすためのミサイルをつくった男たち.ロケットを作るために,予算を欲して軍事兵器を作り,悪魔に魂を売っていた.それほどまでに「何か」に動かされて宇宙に憧れていた.

冷戦時のソ連コロリョフアメリカに核爆弾を落とすことのできるミサイルを開発し,その技術の延長線上で人工衛星スプートニク1号を開発した.技術の発展に戦争はつきものだというが,科学の目覚ましい出来事にはかすんで見える.

そのすぐ後にフォンブラウン人工衛星エクスプローラーを打ち上げることに成功している.かつてドイツ軍に協力し,国中から非難の声があったのにかかわらずだ.フォンブラウンひいては大衆,ひいては国を動かしていた「何か」がそこにはあった.

 

ソフトウェア工学のパイオニアのマーガレットハミルトンと月軌道ランデブーを提案したジョンハウボルト.

現在の開発現場に近い話であり,技術者の地道な努力が功を奏する話は個人的に好みである.現場において,困難な状況を変えるのは,上司が心を動かされたなどというドラマ的な瞬間によるものではなく,その場にいる全員の地道な積み重ねによるものである.

 

各惑星の生命の可能性の探索の軌跡.ソ連のベネラ13号機が金星に降り立っていた事実は知らなかった.リュウグウのときもそうだったが写真があるだけで距離感は近く感じる.もしかしたらいけるんじゃないかと思える距離にある気がする.

宇宙探査機には惑星を素通りするフライバイ,惑星の人工衛星となるオービター,惑星に降り立つが着陸だけしかできないランダー,惑星に降り立って実際に動いて調査するローバーがある.

木星の衛星エウロパは表面が氷で覆われており,中に水があると予想される.必然的に生命体が存在している可能性も高いことがうかがえる.

木星の衛星イオは表面が火山だらけであり,地質学的に極めて活動的な惑星である.

 

地球外惑星を探査,開発するときには地球の生命体が地球外惑星の生態系をおびやかさないように惑星防護ポリシーという法が決められている.

火星の生命の可能性を探るため,火星サンプルリターン計画が現在始動している.計画は三段階に分けられており,一段階目は火星をローバーで調査し,サンプルの試料を作成する.二段階目は資料を回収するためのオービターを送り込む.三段階目は試料を回収し,ロケットでオービターまで打ち上げて,オービターが地球に帰る.現在はこのうちの1段階目が実行されている最中である.

 

惑星がある考え方の転換,ブレイクスルーによって次々に発見されていく.地球と似た惑星,ケプラー452bが1400光年先に発見される.ここでは生命の可能性は十分にあるかもしれないが今のところ分かっているのは公転周期と恒星からの距離ぐらいである.そもそもの距離がこれを遥か彼方のものにしている.

 

 

非常に興味深い本であり,読んでよかった.つくづく自分は技術職が好きなことを実感した.天文学や宇宙物理学には興味を持てない.視点がマクロすぎて何万年先のことなんだという気になる.工学は細かい理論を突き詰める必要性は少ないが,動かなければ意味がない.必然的に実現可能な科学技術の最先端にいくだろう.自分はそういうものに携わりたい.未知の世界の宇宙は目標とするには十分すぎるほどに魅力的だ.